今回は、パリ5区にあるSt.Severin(サン・セヴラン)教会のJean Bazaine(ジャン・バゼーヌ)によるステンドグラスについてお話したいと思います。ステンドグラスの歴史では、画家のデザインによる20世紀ステンドグラスのうちの一つとなります。

ジャン・バゼーヌのステンドグラスとは
ジャン・バゼーヌ(1904‐2001)はフランスの抽象画家で、1964年にステンドグラス職人のBernard Allainと絵付け職人のHenri Dechametとのコラボにより、サン・セヴラン教会後陣の8つの窓に現代的な抽象デザインのステンドグラスが設置されました。サン・セヴラン教会は、13~15世紀に建設されたパリの歴史あるゴシック教会のうちのひとつで、当時このようなモダンなデザインのステンドグラスは大胆というか、人々にインパクトを与えたのでは?と想像します。

ステンドグラスの主題は、カトリック教会における七つの秘跡。左から、終油、結婚、堅信、洗礼、聖体、悔悛(かいしゅん)、叙階を表し、洗礼(ブルー基調のステンドグラス)のみ窓が二か所あります。バゼン自身は「装飾ではなく、不可視のものを可視化する手段」と語っているそうです。それ以前のステンドグラスは人物や植物などが描かれた具象的な聖書画が主でしたが、バゼーヌは色や光そのもので抽象的に表現しています。







テクニックについての感想
ステンドグラスの伝統的なテクニック、鉛の桟でガラスピースを組み合わせる方法を用いています。絵付けはグリザイユによる影つけのみで、そんなに難しいものではないですが、どの程度のトーンでグリザイユを乗せるかということと、あまりかっちりしすぎず、汚すぎず、が重要になってくるかなと思います。絵付けしすぎると暗くなりすぎてしまうので、この辺りは制作過程で実際の現地での光の入り方や量に合わせる必要があります。

ガラスピースを細かく見てみると、割とグリザイユが入っていますが、全体としては十分明るいです。抽象的なデザインのもと、ステンドグラスらしい、華やかな色彩でガラスの長所が活きているなあという印象です。こういった抽象画をステンドグラス化するのは難しかっただろうなあと思います。私だったら躊躇してしまいそうな配色です。
今日ですとフュージング技法などを用いて、また違った表現もできるかもしれませんね。
その他の見どころ
バゼーヌのステンドグラスのある後陣部(教会内東側)には、珍しい螺旋状にねじれた不思議な柱があります。少し離れた場所からみると、まるでヤシの木のようにも見えます。
バゼーヌのステンドグラス以外には、エミール・イルシュ(Émile Hirsch)という職人による19世紀ステンドグラスが入っていて、こちらも綺麗で見ごたえあります。バラ窓は15世紀のもののようです。

サン・セヴラン教会の歴史
サン・セヴラン教会があるのは、セーヌ川の南側、ラテン区という学生街の一角です。すぐ近くにはソルボンヌ大学があって、昔から学者や学生が多く行き交う場所。そんな土地柄もあってか、教会も中世の頃から「知の拠点」的な役割を担ってきたそうです。
建物自体は11世紀からの歴史がありますが、今の姿になったのは13〜15世紀にかけて。特に後陣や柱まわりに、フランス後期ゴシックの優美さがよく残っているとのこと。
革命期にはやっぱり色々あったようで、祭具が持ち出されたり、一時期は教会としての機能も失われていたとか。でもその後修復され、さらに20世紀に入ってからは、ジャン・バゼーヌのステンドグラスも加わり、中世と現代の両方が息づく教会となって息を吹き返したのかなと思います。
場所とアクセス
1 Rue des Prêtres Saint-Sevrin パリ5区、 メトロ4号線 St.Michel駅、10号線 ClunyLa Sorbonne駅から徒歩で数分
終わりに
昔何度か訪れて以来、とても久しぶりに訪れたサン・セヴラン教会。バゼーヌのステンドグラスに再会したところ、あれっ?こんなに鮮やかだったっけ?と、ついのけぞってしまいました。パリ市のサイトを見ると、どうやら数年前に修復、洗浄が行われたらしいので、汚れが落ちて明るくなったのかも。ということは設置当時のオリジナルの発色が見られるということですね。
フランスは歴史ある建造物にも新しい芸術を取り入れることに前向きだなあといつも感心してしまいます。
サン・セヴラン教会は、ノートルダム大聖堂から橋を渡って徒歩5分のところにあります。大聖堂を訪れる機会があれば、少し足を延ばして、20世紀の画家によるステンドグラスを鑑賞してみてはいかがでしょうか?ゴシックと現代の融合?が楽しめると思います。

